溶接前の確認事項溶接機の使い方

家庭用DIYの世界では、木材や樹脂やUVライトを使った工作をする方が多い一方、金属を加工するとなると「難しそう」「危険そう」と感じ躊躇してしますかと思います。

しかし実際には、家庭用に設計された小型の溶接機を使えば、簡単に金属の修理や自作DIYが出来ます。乾かす待ち時間もなく、すぐ固定され耐久性もバッチリです。

折れてしまった自転車のスタンドの修理や、園芸用の棚など使い道はさまざま。

本記事では、安全で簡単に始められる溶接機の使い方と、溶接前に知っておいて欲しい事を初心者向けに5つのステップごとに解説していきます。

ステップ1 家庭用溶接機の基本

ステップ2 作業環境の整備

ステップ3 道具と消耗品の確認

ステップ4 電流・電圧の調整

ステップ5 よくある失敗と対処法

ステップ1 家庭用溶接機の基本

溶接機は大きく分けていくつかの種類があります。
家庭用でよく使われるのは3タイプです。

1.MMA(アーク溶接)溶接棒を使う最もシンプルな方式
2.MIG(半自動溶接)ワイヤーが自動で送り出される為、操作が簡単
3.TIG(高精度溶接)薄板やアルミに強いが上級者向け

1.MMA(アーク溶接)

MMA溶接(アーク溶接)は、電極棒(溶接棒)を使って金属同士をつなぐ最も基本的な方法です。
使い方はシンプルで、まず溶接機本体にアースケーブルをつなぎ、母材(金属の部品)にアースクランプをしっかり固定します。
次にホルダーに溶接棒を取り付け、電源のスイッチを入れ電流を流す準備をします。

実際の溶接では、溶接棒の先端を母材に軽く触れさせてからすぐに離すと「アーク」と呼ばれる強い光と熱が発生し、棒の先端と金属が溶けて一体化します。

このとき、溶接棒は1520度ほど傾け、一定の速度で動かすことがポイントです。
動きが遅いと穴があき、速すぎると接着が弱くなります。
初めての方はまず「点付け溶接」から練習するとコツが掴みやすくなります。

二枚の鉄板を合わせ、ところどころ点で止める練習を繰り返すと、アークの出し方や安定した保持感が身につきます。慣れてきたら短い直線を引き、徐々長さを出して行くのが良いです。

溶接後は冷却を待ってから、表面にできたスラグ(かさぶたのような被膜)をハンマーやブラシで除去すると、きれいな溶接跡が現れます。
電源も100Vで使える機種が多く、練習を重ねれば初心者でも扱いやすいのがMMA溶接の魅力です。

2.MIG(半自動溶接)

MIG溶接は、ワイヤーを自動的に送り出しながらアークを発生させる方式で、家庭用ではガス不要で溶接できるノンガスMIG溶接機が主流です。
使い方はまず、溶接機のスプールにフラックス入りワイヤーをセットし、トーチに正しくセットします。
初めての方が1番最初に苦戦するのがこのトーチにワイヤーをセットする時です。
正しく装着すれば簡単なのですが、順番やワイヤーの太さの確認をせずセットすると上手くワイヤーが送り出されずトーチの中でワイヤーが曲がり、先端で詰まってしまいます。必ず正しい手順でする事が大切です。

次にアースクランプを母材に取り付け、電源を入れれば準備完了です。
トーチのスイッチを押すとワイヤーが送り出され、先端からアークが発生し、金属を溶かしてつなぎます。
MIGの特徴は、ワイヤーが自動供給されるためアークが安定し初心者でも比較的きれいなビードを引けます。

練習方法は、鉄板に「点付け」で小さな溶け込みを作り、アークの出方を確認します。慣れてきたら短い直線を引き、一定の速度と距離を保つ感覚を覚えてください。ワイヤーが母材に近すぎると詰まり、離れすぎるとアークが不安定になるため、トーチ先端から金属までの距離は1cm前後を目安に引きます。

MIG溶接はスラグの除去が不要で仕上がりもきれいなので、家具やフレームなどのDIY製作に最適な方式です。

3.TIG溶接

ガスを使い、高精度で美しい仕上がりを得られる方式。
薄い金属やアルミ溶接にも対応できます。
ただし操作が繊細で上級者向け。初心者がいきなり扱うには難しい面があります。

TIG溶接は、タングステン電極を使ってアークを発生させ、アルゴンガスで溶接部を保護しながら金属を溶かす方式です。
アークが安定しやすく、仕上がりが美しいのが特徴です。
使い方は、まずアルゴンガスのボンベと溶接機を接続し、流量計で適切なガス量を設定します。
アースクランプを母材に固定し、トーチの先端にタングステン電極をセットすれば準備完了です。
アークを発生させると、母材が溶け始めるので、そこへ溶加棒(金属の棒)を差し込みながら溶接を進めます。
両手を使うため操作は少し難しくなりますが、その分コントロール性が高く、精密な溶接が出来ます。

初心者が練習する場合は、まずは「アークを安定させる」練習から始めるのがポイントです。トーチを1520度傾け、一定の距離を保ちながら母材にアークを当て続ける感覚をつかみます。次に、溶加棒を加えずにトーチだけで直線を引く練習を繰り返し、手の動かし方を覚えます。その後、溶加棒を少しずつ差し込みながら点付けを行い、徐々に直線溶接へ移行するとスムーズに上達します。TIG溶接は仕上がりの美しさからプロでも多用される方式で、DIYでもステンレスやアルミ加工をしたい方向けの溶接方法です。

初めての方はMMAかノンガスMIGが始めやすいです。
溶接に慣れてきて、見栄え良くしたい!
鉄以外のアルミやステンレス加工にも、挑戦したい!と、感じたら TIG溶接にチャレンジしてみるのもいいと思います。

ステップ2 作業環境の整備

溶接は強い光と高温、そして大量の火花を伴う作業です。
どこで作業するか!が非常に重要です。

換気ができる場所!
溶接中は煙やガスが発生します。
屋外または、十分に換気できるガレージが適しています。
屋内で行う場合は、換気扇やファンを活用して空気を循環させる意識をして下さい。

燃えるものを近くに置かない!
木材、紙、布、ガソリン缶などが周囲にあると火災の原因になります。

水滴・汗は感電の原因に!
床が濡れていると感電の危険が高まります。
必ず乾いた足場で、スペースを片付けてから始めて下さい。
余裕があればゴムマットを敷くと安心です。
雨の日はもちろん、自身の汗もリスクが高まるので気を付けてください。

家族やペットが近付かない場所!
溶接中の光は目に有害なので、作業スペースには立ち入らせない事が安全のため必要になります。

必要な保護具の準備

必ず専用の保護具を揃えてから溶接を始めて下さい。

最も重要なのが遮光面(溶接面)です。溶接の光には強烈な紫外線が含まれ、肉眼で直視すると「電気性眼炎」という激しい目の炎症を起こします。

自動遮光タイプのヘルメットを使えば、アークが発生した瞬間に自動でレンズが暗くなり、初心者でも安心です。

次に必要なのが溶接用手袋

高温の飛び散る火花から手を守るため、厚手で耐熱性のある革手袋を使用します。
さらに防護服。綿やデニムなど火に強い素材の服を着用し、ポリエステルのように燃えやすい服は避けて下さい。
加えて、保護メガネと防塵マスク
紫外線の反射光や溶接時の煙を防ぐことで、目や肺を守れます。

溶接は適切な装備をするかどうかで安全性が大きく変わります。防護具を揃えるのが面倒に感じても、安心して楽しく作業するために必ず揃えて下さい。

防護具に関して詳しくは【溶接前の準備リスト】に載せています。

電圧の確認
家庭用100Vで使える溶接機も多いですが、厚板を溶接するなら200Vが必要になる場合もあります。

電源の確保・延長コード使用時の注意点
溶接機は瞬間的に大きな電流を使います。
家庭用100Vでも30A近く流れることがあるため、一般的な細い延長コードでは容量不足になり、発熱や火災の危険が高まります。
2.0mm²以上の太さ、可能なら3.5mm²クラスの溶接機用延長コードを選んでください。
延長コードは長くなるほど電圧降下が起こり、本来の力を発揮できなくなります。
5m程度なら問題なく使用できますが、10m以上になると電圧が下がり、アークが不安定になることがあります。

ステップ3 道具と消耗品の確認

溶接を始める前には、機材と付属品が正しく揃っているか確認します。

まずはアースクランプです。

全ての溶接方式(MMA,MIG, TIG)で使います。母材にしっかり挟むことで電流が流れ、安定したアークが発生します。接触が甘いとアークが途切れたり、溶接が不安定になります。金属面を磨いてから挟む事でより電流が安定します。

溶接するためには溶接棒やワイヤーを溶接方式や金属の種類によって合わせたものを選ぶ必要があります。
MMA溶接ならば溶接棒MIG溶接なら溶接ワイヤーが必要になります。

MMA溶接の場合

鉄の溶接にはE6013E7018という溶接棒が家庭用DIYでよく使われています。

2つの違いは、

E6013は初心者向き

点火しやすくアークが安定しているので、初めての方でも使いやすいです。

車や農機具の補修 、棚作りやDIYなどの軽作業に広く使われています。

E7018は中~上級者向き

アークの再スタートが難しいですが、割れにくく強度が高いのが特徴です。

強度が必要な構造物や建築用鉄骨など、建築鉄骨、橋梁、圧力容器、厚板溶接、重要構造物など強度が求められる現場でも使われています。

MIG溶接の場合
ワイヤーが必要になり、ワイヤーは母材を溶かしつつ自分も溶けて溶接金属になります。ワイヤーにも種類があります。

DIYでよく使われているのがラックス入りワイヤー(Flux-cored Wire, FCW)です
ワイヤーの中にフラックス(薬剤)が詰まっています。

アルゴンガスなどの別途ガスが必要なガスシールドタイプと、ガスが不要なノンガスタイプの2種類あります。
ガスシールドタイプの方は、アークが安定し溶け込みが深い為、ビードが綺麗です。

初めての方はガスの用意が必要のないノンガスタイプのフラックス入りワイヤーがおすすめです。
DIY、フェンス、農機具、自動車補修などであれば、小型溶接機100Vで手軽に溶接できます。
母材の材質に合わせてワイヤーを選ぶ必要があります。

特殊合金ワイヤ

ステンレス用(ER308L,ER316Lなど)

アルミ用(ER4043,ER5356など)

ニッケル・銅合金など特殊金属用等

溶接棒やワイヤーの違いについて詳しくは100V200Vの違い・消耗品の種類に載せています。

ステップ4 電流・電圧の調整方法

電流・電圧の設定は仕上がりを大きく左右する重要ポイントです。
母材の厚みと溶接方式によって決まります。

MMA(アーク溶接)の場合、
設定するのは主に電流値(アンペア)で、使用する溶接棒の太さに合わせて電流を変えます。例えばΦ2.0mm棒なら6080AΦ3.2mm棒なら90120Aが目安となります。電流が低すぎるとアークが安定せず溶け込みが浅くなり、強度不足の原因になります。逆に高すぎると金属に穴があき、スパッタが多くなります。

MIG溶接では
電圧とワイヤー送給速度のバランスが重要ポイントです。
電圧を高くするとビードが平らになり、低くすると盛り上がりやすくなります。
ワイヤーが途切れず「ジジジ」と安定した音が出る組み合わせが正解です。

TIG溶接では、板厚1mmあたり40Aを目安に設定し、アルミなら交流(AC)、鉄やステンレスは直流(DC)を選びます。
最初はメーカー推奨値からスタートし、実際に試し打ちをしながら微調整します。
アークの安定性、ビードの形、スパッタ量を観察しながら、自分の作業スタイルに合った設定を見つけてください。

ステップ5 よくある失敗と対処法

1. アークが安定しない
初心者が最も多く経験するのが「アークが続かない」現象です。
原因は電流不足か、溶接棒やトーチ先端が母材から離れすぎていることが考えられます。
対処法はまず設定電流を少し上げてみること、アーク長を一定に保つことです。MMAなら棒の太さと同じくらいの距離を意識すると安定します。

2. 母材に穴があく
アークを長く同じところに当てすぎると、金属が溶けすぎて穴があいてしまいます。電流が高すぎる、または移動が遅いことが原因です。対処法は出力を少し下げるか、スピードを速めることです。薄板では断続的に点けて離すをくり返すステッチ溶接が有効です。

3. ビードがガタガタで見栄えが悪い
ビードと呼ばれる溶接跡が曲がったり盛り上がったりする場合は、手の動きが不安定なのが原因です。溶接中は棒やトーチを一定の角度(1520度)に保ち、同じスピードで移動させるのがポイントです。最初は直線を短く引く練習を繰り返すと、徐々に安定してきます。

4. スパッタが多すぎる
溶接中に飛び散る火花(スパッタ)が多いと、仕上がりが汚くなります。主な原因は電流・電圧のバランス不良や、母材の表面にサビや油が残っていることです。作業前に必ずブラシやサンダーで表面を磨き、脱脂剤で油を落とす事で改善します。MIGの場合はワイヤー送給速度を見直すと改善します。

5. 溶け込み不足(強度不足)
表面だけくっついて、中まで溶け込んでいないと、見た目はきれいでもすぐに剥がれます。電流不足や移動が速すぎることが原因です。溶接後の部材をハンマーで叩いてみると、強度不足はすぐ分かります。設定を少し上げ、溶融池をしっかり観察しながら進めることで改善します。

6. ガスシールド不良(MIG/TIG
MIGTIGではガスの流れが不足していると、ビードに黒いススや気泡が入りやすくなります。風の強い場所では作業を避け、アルゴンやCO₂の流量を適正(612L/min程度)に調整します。ノズルにスパッタが詰まっている場合もあるので、使用後の清掃も仕上がりに関わってきます。

初心者が練習するおすすめ手順

溶接は一度にすぐ上達するものではなく、段階を踏んで練習することが大切です。
いきなり大きな作品を作ろうとしてもうまくいかず、失敗が続くと挫折の原因になっります。

1. まずはアークを出す練習
最初のステップは「アークを安定して出せるかどうか」です。鉄板を用意し、アースクランプをしっかり挟んで溶接棒やトーチを近づけます。アークは棒を軽く触れて離す、あるいはマッチを擦るようにして発生させます。はじめは棒がくっついたり火花が途切れたりしますが、何度も繰り返して安定して光と音が出る感覚を体で覚えます。

2. 点付け(タック溶接)で固定する練習
次は「点で止める」練習です。2枚の鉄板を合わせ、角や端を軽くアークで溶かして数秒固定します。これを繰り返すと、母材がずれずに保持できるようになります。点付けは部材を仮止めする重要な工程です。火花の量や溶け込み具合を確認しながら溶け込む感覚をつかみます。

3. 短い直線を引く練習
点付けが安定したら、次は短い直線を引きます。10cm程度の距離を一定の角度(1520度)とスピードで移動させてビード(溶接跡)が途切れず、幅と高さがそろっていれば成功です。最初はガタガタですが、繰り返すことで手の動きが安定してきます。

4. 連続溶接に挑戦
短い直線に慣れたら、少しずつ長い距離に挑戦します。溶けている部分を常に観察しながら進めるのがポイントです。母材が厚い場合は電流をやや上げ、薄い場合は早めに移動して穴あきを防ぎます。ビードの形が均一で、スラグを落としたときにきれいな銀色の線が出れば成功です。

5. 角や重ね溶接で応用練習
最後に応用として、L字に組んだ金属や重ねた板を溶接してみます。角の内側はアークが届きにくいので、棒やトーチをやや寝かせて溶け込みを意識します。重ね溶接では端までしっかり溶かすことが重要です。こうした応用練習を繰り返すと、実際のDIYに近い感覚をつかむことができます。

失敗するのが当たりまえだと考えて下さい。溶接は経験を重ねるほど確実に上達します。まずは鉄板で練習を重ね、自信がついてから作品づくりに挑戦するのが上達の近道です。

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