溶接機の溶接棒とワイヤーの種類について

溶接機の溶接棒とワイヤーの種類について

溶接するためには溶接棒やワイヤーを溶接方式や金属の種類によって合わせたものを選ぶ必要があります。
MMA溶接ならば溶接棒、MIG溶接なら溶接ワイヤーが必要になります。

MMA溶接の場合

鉄の溶接にはE6013E7018という溶接棒が家庭用DIYでよく使われています。
2つの違いは、強度や性質が大きく違います。

鉄用溶接棒

E6013はルチル系被覆。
点火しやすい。アークが安定。
難易度:初心者向き。
アークの立ち上がりが良くてスラグも剥がれやすいのが特徴です。溶接ビードがなめらかで、見た目もきれいなので初心者でも扱いやすい溶接棒です。
引張強さ(引っ張った時に亀裂や破断)が60,000 psi級(約42kgf/mm²
一般的な軟鋼(鉄骨や薄板)向けで、車や農機具の補修 、DIYなどの軽作業に広く使われています。

E7018は低水素系被覆。
アークの再スタートが難しい。割れにくく強度が高い。
難易度:中~上級者向き。
溶接金属の水素量を抑え、割れにくくする効果があります。その反面、湿気を吸い取りやすいため高温多湿な場所を避け、床や壁に直接密着させず、風通しの良い場所で保管するなど注意が必要です。
引張強さが70,000 psi級(約49kgf/mm²
強度が必要な構造物や建築用鉄骨など、建築鉄骨、橋梁、圧力容器、厚板溶接、重要構造物など強度が求められる現場でも使われています。
他にも溶接棒には種類があります。

E6010はセルロース系 直流(DC)専用。
被覆にセルロースを使用されており、燃焼時に大量のCO₂ガスが発生させる事でシールド効果が強い。
アークは非常に力強く、スピード溶接向きです。
アークが暴れやすく、コントロールが難しいです。
難易度:中~上級者向け
主に、厚板の初層溶接や建築鉄骨、橋梁、造船などの本格現場プロの配管工や鉄骨工事に使われることが多い溶接棒で家庭用にはあまり向いてません。

E6011はセルロース系 AC/DC両用
被覆はE6010に似ていますが、ACでも安定するよう調整されている為、小型の家庭用溶接機でも使用出来ます。
難易度:中程度(練習すれば初心者でも)
強度はE6010とほぼ同等でアークはややマイルドで安定しやすくスラグは少ないです。
主に農機具、車両、フェンスなどの修理や補修、薄板から中厚板までの一般溶接が出来、さびや塗装が残っていても使いやすいのが特徴です。

E7014は鉄粉ルチル系アークの特徴はE6013よりやや強めで安定感があり、再スタートもしやすく、連続作業に向いています。スラグは厚めだが剥がれやすいのが特徴です。
鉄粉入り被覆の為、溶着効率が高く、肉盛りや厚板に金属を盛ることが出来ます。
主に、一般建築(鉄骨、H鋼、橋梁)や厚板や大電流溶接(効率重視の現場)で使われています。強度と仕上がりを両立させたい場合に使用する事が多いです。
難易度:中級者向け(E6013よりやや難しい)

ステンレス用溶接棒(E308L, E309, E316

ステンレス鋼材の溶接に特化した溶接棒の準備が必要です。
ステンレス製タンク、配管、厨房器具など母材に合った種類の溶接棒を選びます。

E308L 最も標準的なステンレス用溶接棒
対象材質はSUS304, SUS304Lなど標準的なステンレス鋼の溶接
厨房機器、食品機械、建築、タンク、配管など幅広く使え屋内設備やサビを避けたい製品にも使えアークは比較的安定していて、スラグもはがれやすいです。
ビード美しく、ステンレス特有の光沢が出やすいのが特徴。
難易度:初心者でも扱いやすい

E309 異種金属の溶接に必須。
対象材質:異材継手(ステンレス⇔軟鋼/炭素鋼/低合金鋼)
異材(ステンレス+炭素鋼)の熱膨張差に耐える事が出来、
割れにくく、耐食性も確保します。
プラント配管、ボイラー、炉、橋梁などで使われます。
難易度:中級者向け

E316 耐食性に強い
対象材質:316系ステンレス鋼(SUS316, 316L
塩素イオンに強く、耐孔食性が高い事と海水や薬品に強い為、腐食環境で性能を発揮します。
海水環境(船舶、港湾設備、海洋構造物)や化学薬品や酸に触れる機器(薬品タンク、製薬設備、医療機器)に使われています。
他の溶接棒に比べ価格が高いので、用途を絞って使うことが多いです。
難易度:中級者向け

鋳鉄用溶接棒(ニッケル系)

強度は炭素鋼用(E6013/E7018)と比べるとやや低めです。
強度よりも割れにくさと機械加工性が重視されています。
溶接金属が硬くなりにくく、母材との伸びの差を吸収できるため、割れが起きにくいのが特徴で価格が高く、用途を絞って使うことが多いです。
鋳鉄の補修・肉盛り・エンジンブロッ・ギアハウジング・ポンプケーシング・工作機械部品など。
鋳鉄は割れやすい・脆いため、通常の鉄鋼用溶接棒ではクラックが入りやすい為
ニッケル系を使うことで柔軟性を持たせ、補修溶接が可能になります。

MIG溶接の場合

ワイヤーが必要になり、ワイヤーは母材を溶かしつつ自分も溶けて溶接金属になります。
ワイヤーの種類は大きく分けて3つ

1.ソリッドワイヤー(実芯ワイヤー)ER70S-6

中身が金属だけで、フラックス成分は入ってない。
シールドガス必須でガスによって溶け込みや仕上がりが変化します。(CO₂、アルゴン、または混合ガス)
難易度:中級者向け

2.ラックス入りワイヤー(Flux-cored Wire, FCW

ワイヤーの中にフラックス(薬剤)が詰まっている。

・ガスシールドタイプ(外部ガス必要)
アークが安定、溶け込みが深い、ビード外観が良い
厚板溶接、構造物、工場内作業、建築鉄骨、造船、橋梁、圧力容器など強度が必要な現場で使われます。
難易度:中級者以上向け

・ノンガスタイプ(ガス不要)
アークはやや粗い、スパッタ多め、だが風に強い
DIY、フェンス、農機具、自動車補修など小型溶接機100VMIGで手軽に使用可能。
ガスの用意が必要ないので手軽に出来はじめて溶接を始める方には1番オススメです。
難易度:初心者向け

3.特殊合金ワイヤー

・ステンレス用ワイヤー(ER308L, ER309, ER316)
ソリッドワイヤー(実芯ワイヤー)で、外部ガス(Ar+CO₂など)が必要です。
アークは安定していて、ビード外観が綺麗でスパッタは少なく、仕上がりは鏡面に近いです。

ER308L SUS304系の標準ステンレス
ER309 ステンレスと炭素鋼の異材溶接
ER316 耐食性(塩水・薬品)環境用、SUS316

・アルミ用ワイヤー(ER4043Si系)、ER5356Mg系))
ソリッドワイヤー+100%アルゴンシールドガスが必須です。
アークは安定していますが、アルミは酸化膜が強固でブラッシング、脱脂などの前処理が必要です。
柔らかい素材なので送給トラブルが起きやすい為、テフロンライナー必須です。主に、自転車フレーム、アルミフェンス、自動車、バイク部品の溶接に使われます。

・ニッケル・ニッケル合金用ワイヤー ERNiCr-3(インコネル600/800用)、ERNiMo-3(耐酸性合金用)
アークはやや強く、深い溶け込みで高温でも強度を維持するのが特徴です。
主に、耐熱鋼、超合金の溶接、火力発電所のタービン、化学プラント、原子力関係で使われています。

4. 銅・銅合金用ワイヤー ERCu, ERCuSi-A(シリコンブロンズ)

導電性が高く、アークは比較的安定していてスパッタは少ないです。
主に、銅や黄銅の補修、銅パイプや装飾金属、異材溶接の中間層としても使われています。

たくさん種類があると難しく感じますが、

鉄の溶接の場合MMA溶接なら溶接棒はE6013
MIG溶接のノンガス溶接ならワイヤーはラックス入りワイヤーから

始めてみるのがオススメです。
分からない事等、ありましたらぜひお問い合わせください。

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