溶接機の専門用語

初心者が知っておきたい基礎知識

溶接機の購入を悩み検索すると、たくさんの専門用語が出てきます。
「母材って何?」「アークとは?」「ワイヤーがいるの?」
安心して溶接に挑戦できるように溶接ならではの用語をまとめました。

DIY初心者が疑問に思う溶接の専門用語をやさしく解説していきます。

1.母材(ぼざい)

母材とは、溶接の「土台」となる金属のことです。

鉄の板どうしをつなげたい場合、その鉄板が母材になります。

母材を熱で溶かし、溶接棒やワイヤーで金属を補って固める事で鉄同士をつなぎ合わせます。母材の材質や厚さによって、使う溶接方法や溶接棒の種類を変えることで様々な材質の溶接が出来るようになります。

2.半自動溶接(MIG/MAG

半自動溶接とは、溶接ワイヤーが自動で送り出される溶接方式のことです。

溶接する人はトーチを握って動かすだけで良い為、MMA(手棒溶接)よりも均一に溶接し易いです。MIGはアルゴンなどの不活性ガスを使う方式で、ステンレスやアルミの溶接に適しています。MAGCO₂などの活性ガスを使い、鉄の溶接に適しています。

3.MMA溶接(手棒溶接)

MMA溶接とは、被覆アーク溶接とも呼ばれています。

電気を流すと溶接棒の先にアークが発生し、その棒が溶けて母材と一体化します。被覆剤がガスやスラグを発生させて溶接部を保護するため、別でガスの用意をする必要がなく、屋外や風のある環境でも作業できます。

4.TIG溶接

TIG溶接とは、タングステン電極を使い、アルゴンガズなどのシールドガスで母材を保護しながら行う溶接方法です。

電極自体は溶けず、必要に応じて溶加棒を手で加えて金属をつなぎます。アークが安定し溶接方法の中で最も仕上がりが綺麗です。ステンレスやアルミなどの溶接にも適しています。デメリットは他の溶接方法より作業に時間かかかる事と両手を使いながら溶接する必要がある為、技術が必要となります。

5.プラズマ切断

プラズマ切断とは、圧縮空気に高電圧を加えてプラズマ状態にして、その高温(約23)のアークで金属を溶かしながら吹き飛ばして切る方法です。

酸素バーナーでは難しいステンレスやアルミの切断も出来、スピードも速くきれいに仕上がります。鉄板を切断してDIY工作や、農機具の部品を切断して交換することも出来ます。ガスボンベを使わず電源とコンプレッサーがあれば使用出来ます。

6. ノンガス溶接

ノンガス溶接とは、シールドガスを使わずにできるMIG溶接のことです。

通常のMIG溶接ではアルゴンやCO₂などのガスで溶融部を覆い、酸化を防ぎながら溶接する必要がありますが、ノンガス溶接では「フラックス入りワイヤー」を使うことでガスが不要になります。屋外でのDIYや風が強い場所ではガスが吹き飛ばされやすいため、ノンガス溶接が風の影響をうけない為使いやすいです。デメリットとしては、スパッタが多く、仕上がりがガス使用時よりも劣るので手軽さを優先したい時やはじめて溶接をする方にオススメです。

7.フラックスワイヤー

フラックスワイヤーとは、ワイヤーの内部にフラックス(溶剤)が詰められたワイヤーです。内部のフラックスが燃えガスを発生させて、そのガスで溶接部を酸化から守りスラグ(溶けた金属を覆う膜)を作ります。

そうすることで、アルゴンやCO₂などのガスを用意しなくても溶接できるようになり風のある場所でも溶接が可能になります。ノンガスMIG溶接機では、このフラックスワイヤーを使用することで、ガスボンベ不要で手軽に溶接出来ます。

8.溶接棒

溶接棒とは、溶接する時に熱で母材を溶かし、同時に溶けてつなぎ目を埋める役割をする金属棒です。鉄の板どうしをつなぐときには鉄用の溶接棒を使います。DIYでよく使われるE6013という溶接棒は、初心者でも使いやすいです。

9.アーク

アークとは、溶接棒の先端を母材に近づけると「バチッ」と火花が出ますが、これがアークです。このアークが3,000℃以上の高温を生み出し、金属を溶かすことで鉄同士を繋ぎあわせる事が出来ます。アークは目に有害な光を出すため、溶接面でしっかり保護する必要があります。

10.スラグ

スラグとは、溶接後にビード(溶接の筋)の表面にできる固まったカスのようなものです。これは溶接棒の被覆剤や金属が溶けて冷えるときに表面に浮き出たもので、母材を酸化から守ります。鉄板をMMA溶接した後にビードの上に黒っぽい膜が出来ます。それがスラグです。

11.溶融池(ようゆうち)

溶融池とは、溶接中に母材と溶接棒が溶けて、液体状になっている部分のことです。アークの熱で一時的に金属が溶け、水たまりのように見えるため「池」と呼ばれます。例えば、鉄の板を溶接するとき、アークの直下に小さな光る溶けた部分が溶融池です。

12.溶接ビード

溶接ビードとは、接合部に盛り上がった筋ができますが、それがビードです。

溶接後に母材の表面に残るつなぎ目の筋は、アークの熱で溶けた溶融池が冷えて固まることででき、溶接がうまくいったかどうかを判断する目安にもなります。

ビードが均一で波形がきれいだと強度も高く、見た目も美しく仕上がります。

13.溶接トーチ

溶接トーチとは、アーク溶接の時に溶接材を溶かすアーク発生器具のことです。

トーチには、たいまつなどの意味があります。

MIG溶接ではトーチの先から自動でワイヤーが出てきて母材とアークを作りながら溶け込みます。

TIG溶接では、タングステン電極を固定する為にトーチを使います。

14. アースクランプ

アースクランプとは、溶接機から出る電気を母材に流すための金属製クリップです。電気が流れる事で溶接する事が出来るようになります。

アースクランプは電気を通すために重要なアイテムです。例えば、鉄板を溶接する場合、母材の端にアースクランプをしっかり挟んで固定します。これが緩んでいるとアークが不安定になり、溶け込み不足やビードの乱れの原因になります。錆びや塗装部分を避け、導電性の良い場所に付けるのがポイントです。

15.電極(でんきょく)

電極とは、電気を流すための電気の出入口となる部分でアークを発生させ、母材を溶かす役割をします。

MMA溶接の場合、溶接棒そのものが電極になります。

TIG溶接の場合、トーチの先端に固定されたタングステン棒が電極になります。

16.溶接電流

溶接電流とは、溶接に使う電気の強さ(Aアンペア)です。

電流が強いほど熱が高く、厚い金属でも溶かすことができます。

電流が弱いと、薄板でも穴を開けにくく、細かい作業に向きます。

2mmの薄い鉄板を溶接するときは80A前後、6mmの厚い鉄板なら120A以上といわれています。電流が強すぎると穴あきやスパッタ増加、逆に弱いと溶け込み不足の原因になります。

17.溶接電圧

溶接電圧とは、溶接で使う電気の圧力(V=ボルト)です。

電圧が高いとアークが長く安定することで広く浅く溶け込みます。

電圧が低いとアークは短くなり、狭く深い溶け込みになります。

例えば、MIG溶接では電流だけでなく電圧も調整出来ます。

電圧を上げるとビード幅が広がり、電圧を下げると細いビードになります。電流と電圧のバランスが悪いとスパッタが多くなったり、ビードが盛り上がりすぎてしまいます。母材の厚さやワイヤー径に応じて電流と電圧をセットで調整する事が大切です。

18.溶接電源

溶接電源とは、溶接機に供給する電気の種類や方式をいいます。

一般的に家庭用のコンセントは100Vが多いです。DIYでは100Vタイプが扱いやすいですが、厚板を溶接するには200Vの電圧がないと溶け込みが浅かったり、ステンレスやアルミの溶接は難しいです。

また、電源方式には交流(AC)と直流(DC)があり、ACはアルミ溶接に向き、DCは鉄やステンレスの溶接で多く使われます。例えば、家庭用100V溶接機なら鉄製の棚の修理や自転車の補強などなら問題なく使えますが、厚い鉄骨をしっかりつなぐには200Vのパワーが必要です。

19.直流(DC

直流とは、電気が一方向にだけ流れる方式のことです。

溶接では「極性」を選ぶことでアークの特性が変わります。

+側を溶接棒にするDC正極では深い溶け込みが得られ、厚い鉄板の溶接に向いています。

-側を溶接棒にするDC逆極ではアークが安定しやすく、薄板やステンレスの溶接に向いています。溶接機の+と-どちらに電気の出入口となる部分(9.電極)を持ってくるかで溶接の仕方が変わります。

例えば、鉄骨を溶接する場合はDC正極で強度重視、ステンレスパイプのDIY補修ならDC逆極で仕上がり重視といった選び方も出来ます。

直流溶接は安定したアークが得られるため、初心者にも扱いやすい方式です。

20.交流(AC

交流とは、電気がプラスとマイナスを交互に入れ替わりながら流れる方式のことです。

溶接ではアルミの溶接によく使われます。ACは電気の向きが入れ替わる事で、アークが左右に揺れるようになり、酸化膜を取り除きながら溶接できる特徴があります。

ACはアークが安定しにくくスパッタも出やすいため、鉄やステンレスの溶接では直流(DC)がオススメです。

溶接機低価格帯の商品だとDCのみの場合も多いので、アルミやステンレス加工したい方はDC/AC切替可能な商品なのかもチェックして下さい。

21.ピット

ピットとは、溶接した部分の表面にできる小さな穴やくぼみのことをいいます。

溶接中にガスが抜けきらない時やアークを急に止めたときに溶融池がうまく埋まらない時に起こります。例えば、鉄板を溶接してビードの最後をパッと止めてしまうと、その終端に小さな穴が開くことがあります。それがピットです。

ピットがあると割れやサビが広がる原因にもなるので、アークを止める際は少し戻しながら溶融池を埋めるようにすると出来にくくなります。

22.ひずみ

ひずみとは、溶接中の高熱によって母材が膨張・収縮し、冷えた後に形が歪んでしまう事をいいます。鉄板を片側だけ長く溶接すると冷めた時、収縮して板が反り返ることがあります。ひずみを防ぐには、左右交互に溶接や短いビードで区切って溶接する事で反り返りにくくなります。簡単な方法としては、仮付けで先に位置を固定してから本溶接するのも対策の1つです。

23.割れ

割れとは、溶接した部分やその周りに発生する亀裂のことをいいます。

溶接金属が冷えて固まるときの収縮や、母材との相性などが原因で起こります。

厚い鉄板を一度に強い電流で溶接すると、冷却時に内部が引っ張られ表面に細いヒビが入ることがあります。対策としては、予熱して母材を温めてから溶接や、適切な電流設定で溶接ビートを重ねて溶接することで割れにくくすることが出来ます。

24.スパッタ

スパッタとは、溶接中にアークの熱で溶けた金属が小さな粒となって飛び散る事をいいます。母材や周囲に付着すると見た目が悪くなり、後処理に手間がかかります。MIG溶接やノンガス溶接ではスパッタが多く発生し、鉄板の周囲に細かい粒がつくことがあります。電流や電圧の調整やトーチの角度を安定させることで飛びづらくなります。また、事前にスパッタ防止スプレーを母材に塗布しておくと後の掃除が楽になります。

25.溶接面(ようせつめん)

溶接面とは、溶接中に目や顔を守るため遮光ガラスが入ったマスクのことを言います。アークの光には目に有害な紫外線や赤外線が含まれていて、直視すると「電気性眼炎(電気焼け)」になり強い痛みを引き起こします。サングラスで代用しようとする方もいますが、必ず溶接専用の遮光面を使用してください。初めての方はアークが出た瞬間にガラスが暗くなる(自動遮光式)が使いやすいと思います。

26.遮光ガラス

遮光ガラスとは、溶接中に発生するアーク光から目を守るための特殊なガラスです。紫外線や赤外線を遮り、溶接時に溶融池やビードを確認しながら作業できるようにします。MMA溶接する際、このガラスがないと一瞬で目を痛めてしまいます。遮光度は「#8#13」などの番号で表されています。薄板の低電流溶接では#9#10、厚板や高電流では#12#13程度あった方がいいです。

27.シールドガス

シールドガスとは、溶接中にアークや溶融池を覆い、酸素や窒素から金属を守るために使うガスのことをいいます。ガスがないと溶接部分が酸化して穴や割れができやすくなります。TIG溶接ではアルゴンガス、MAG溶接ではCO₂や混合ガスを使用します。シールドガスは見えない保護カバーのような役割をしています。

28.アルゴンガス

アルゴンガスとは、溶接でよく使われる不活性ガスの一つです。空気中の酸素や窒素と反応せず、溶接部を保護します。

TIG溶接やMIG溶接で使用され、ステンレスやアルミの溶接には欠かせません。無色・無臭のため目に見えませんが、見えないバリアとして溶融池を守る役割をしています。

29.CO₂ガス

CO₂ガスとは、主にMAG溶接で使われる二酸化炭素のことです。

アルゴンに比べて安く手に入りやすいため、コストを抑えつつ強度を確保したいときに頼れるガスで鉄の溶接でよく使われています。

アークが強く深い溶け込みが得られますが、スパッタが多く発生します。鉄骨の溶接や鉄製フェンスの製作など、強度を重視した溶接にはCO₂ガスが使われます。

見た目重視の場合はアルゴン混合ガスの方が綺麗に仕上がります。

30.ワイヤー送給装置

ワイヤー送給装置とは、MIG溶接で使う溶接ワイヤーを自動的に送り出す装置のことをいいます。ワイヤーの送給がスムーズならきれいなビードが引けますが、詰まり引っ掛かりがあるとビードが途切れ、見た目や強度が悪くなってしまいます。ワイヤーの太さによってここの部品を外し調節する場合もあります。

31.ワイヤースプール

ワイヤースプールとは、溶接ワイヤーを巻いて収納しているリールのことです。円盤状のスプールに長いワイヤーが巻かれていて、溶接機の送給装置によって少しずつ引き出されて使われます。

32.デューティサイクル

デューティサイクルとは、溶接機が連続して使用できる時間を表しています。

説明書などだと定格使用率と書かれている事が多いです。例えば定格使用率60%と書かれていれば、10分間のうち6分間は溶接可能、残り4分は機会を休ませる必要があります。こ機械内部の発熱を防ぎ、安全に使うための制限です。

無理に溶接を続けると、機械が過熱して停止・故障の原因になります。

溶接は「専門的で難しい作業」というイメージを持たれがちですが、用語を理解すれば作業のイメージがつきやすくなります。
小さな修理から本格的なものまで、家庭用溶接機は可能性を大きく広げてくれます。
はじめてでも安心して溶接を始める事が出来るお手伝いを私たちにさせてください。
届いたその日から溶接を楽しめます。

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